出産前のこころの準備(2)~赤ちゃんと対面する時のこと

ここでは出産後~退院までの期間について、ママに知っておいてほしいことを書きましょう。

助産院や自宅で出産をしたママにも、助産師や看護師として赤ちゃんに接する方にも

心にとめていただければ、と思います。

 

赤ちゃんが生まれてからしばらくの間過ごす 病院という環境。

赤ちゃんの「はじまりの記憶」にまつわる、大切な場所です。

『 コラム § カンガルーケアのその先へ 』でも触れましたが

育児の場面において、たびたびママを悩ます

「分離不安(ママと離れられない)」という問題があります。

 

後追いが激しい、他の人に抱っこされるのを嫌がる、

幼稚園や保育園へ行きたがらない、

ママの大切な用事の時に熱を出す、

きょうだいが生まれたときの赤ちゃん返り、など。

 

成長しても、この痛みが相手を変えて「別離の不安」を引き寄せます。

登校拒否、引きこもり、

友だちといつもつながっていないと不安、

彼が電話に出ないと不安になる、

彼女から別れを切り出されてつい殴った、など。

 

実はこれらは

母体から切り離されてしまったと感じる痛みが引き起こしているのです。

 

これまでママに包まれて、そこかしこにママを感じて

ママの意識と一体化していた赤ちゃん。

 

生まれるということは、一転 異空間に放り出されるようなものです。

 

その環境の違いにびっくりし、

ママの存在をどこにも感じることができず

赤ちゃんはとても心細い思いをします。

 

状況のわからないまま、新生児室や保育器の中でママの存在を探します。

時間の感覚のわからない赤ちゃんには

待つ時間は永遠に等しいものです。

 

待って待って、待ちつかれてあきらめた頃

ママがやってきます。

 

授乳しようと乳首をあてがわれますが

せめてもの抵抗、という感じで

赤ちゃんはくわえるのを拒むことがあります。

 

まさかぁ、こんな小さな赤ちゃんが!? と思うでしょう。

 

けれども、大人の方に退行療法などをすると、

当時の気持ちがこのように出てくることが多々あるのです。

 

赤ちゃんには、胎児の時から意識があり記憶もあります。

けれども、それを大人にわかるように伝えることができません。

そして、言葉を話す頃にはこの記憶は心の奥へしまい込まれ、

子ども自身も忘れてしまいます。

 

また大人も、まさか赤ちゃんがそんなこと思うわけないだろう、という

先入観で見ています。

自分のことは忘れているので、赤ちゃんがサインを出しても気づかず

見当違いの対応をしてしまいます。

 

こうして、

人生において一番大切な「はじまりの記憶」は

すれ違い、勘違いのまま しまい込まれ、

人生の多岐にわたって影響を及ぼし続けるのです。

 

出産をし、新生児に問題がなければ

多くの産院で「カンガルーケア」と呼ばれる抱っこの時間が与えられます。

 

この時に、

 生まれてきてくれてありがとう

 会えてうれしいよ

と赤ちゃんに、ママの素直な気持ちを伝えましょう。

 

そして、ここからが大切なのですが

赤ちゃんと離れる時、赤ちゃんに伝えましょう。

 

ママは少しここで体を休めるからね

あなたは赤ちゃんのベッドに行って待っていてね

ママは動いていいよって言われたら、すぐに迎えに行くからね

それまでひとりで待っていてね

 

そう言うことで、赤ちゃんは未熟ながら理解します。

ママとはなれるってどういうことかを。

 

ママがいないって、こんなかんじなんだな。

でも、あとでくるって言ったから、さびしいけど待っていよう。

ママにきらわれたわけじゃないんだから。

 

新生児室でも、ケアをするスタッフが

ママの代わりにこんなふうに声をかけたらいいでしょう。

 

ママのこと、もう少し待っていてね。

ママはあなたのこと大好きだよ。心配ないよ。

 

赤ちゃんが「つながっていない」という感覚を始めて味わうこの時、

寄り添ってサポートしてあげられるといいですね。

 

「近くにいなくても、心はつながっているし、愛されている実感がある」

 

その安心感を「はじまりの記憶」の中に入れてあげられたら

赤ちゃんの人生は、自己肯定に満ちた幸せなものになるでしょう。